ニシキアナゴ
Gorgasia preclara

–大きさ–
最大で体長40cmに達します。しかし、そのほとんどは砂の中に隠れているので、見える部分は10cm程度で、体の直径は約1cmです。ちなみに、人間の指は平均的に直径2cmほどですから、ニシキアナゴは指の半分くらいの太さしかありません。同じウナギ目の美味しいウナギとは違ってニシキアナゴは食用には向きません。

–色–
橙色の体色に、体側にははっきりとした白色の横帯がリング状に入っています。この白色の横帯は光を反射してキラキラと輝きます。ニシキアナゴという名前は、この綺麗な色合いから来ています。錦とは、色鮮やかな絹織物のことですから、ニシキアナゴは絹のように美しい魚ということですね。英名ではSplendid Garden Eelと呼ばれます。Splendidとは素晴らしいという意味ですから、英語圏でもニシキアナゴの美しさが認められていることがわかります。

–形–
円筒形の体をしています。頭部はやや平たくなっており、眼は大きくて丸いです。口は小さくて尖っており、歯は細かく並んでいます。背鰭と臀鰭は体の後半部分から尾鰭まで連続しています。胸鰭や腹鰭はありません。

-どこにいる？-
インド洋や紅海、太平洋などの暖かい海域に広く分布しています。日本では伊豆半島以南から小笠原諸島や琉球インド太平洋西部の熱帯域に広く分布しています。生息域はモルディブからパプアニューギニア、北は日本の琉球列島やフィリピン近海にまで広がっており、同属のチンアナゴの生息域とも重なっています。ニシキアナゴは流れのある水深18mから75mの砂地に生息していますが、平均的には水深30mほどの地点で見られることが多いです。ニシキアナゴは砂の中に自分で掘った縦穴に入り、単体または小さな集団で生活しています。通常、頭と体の最上部だけが砂から突き出ており、大きな魚やダイバーが近づいてくると体全体が砂に引っ込みます。このように、ニシキアナゴは砂の中に隠れていることが多いので、見つけるのはなかなか難しいかもしれません。

-どんな魚？-
動物プランクトンを食べています。潮の流れに合わせて体の向きを変え、口を開けてプランクトンを吸い込みます。このとき、体は砂から出た部分だけをくねくねと動かします。この動きがまるで花畑の中の花が風に揺れるように見えることから、英名ではGarden Eelと呼ばれます。日本ではチンアナゴも同じように呼ばれますが、ニシキアナゴはチンアナゴよりも色鮮やかで華やかな印象ですね。ニシキアナゴは性別があり、雌雄異体です。しかし、外見的には雌雄の区別はつきません。繁殖期になると、ニシキアナゴは同時に砂から全身を出して遊泳し、放精放卵を行います。このとき、ニシキアナゴは一斉に白い精子や卵を放出するので、まるで花火のように見えます。この光景は非常に幻想的で美しいと言われています。